キッチン
サカナ

いいよ
ぶた肉だっておいしいし
キャベツだっておいしいさ
私はかなしみの台所で
フライがえしをあやつるアリア
しおのひとふりでとけてしまう味
がまんできない幼子の
かなしみ かなしみ かなしみ
私 一人 キッチンで口ずさむアリア
あり余る 憎しみ
しおをひとふり 気分がやわらぐか
私 うたう一人 かなしみの キッチン
夕日のさしこむ まひる
感情のフライがえし うらがえる
情動のごったに
夕日のさしこむまどべにかなしみのアリア
私一人 キッチンで
人間のにおいを やく
みにくいものを こがす
ぶた肉だっておいしいし
キャベツだっておいしい
そう おいしい
口ずさむ歌はとまらない
あふれて あふれて
しおをひとふり フライパンをよごす
夕日にむかってほえるつづける 人間
ここに いるよ
夕日につつまれて
燃え上がるキッチンの
その かなしみを
私は
たった一人で
知る


自由詩 キッチン Copyright サカナ 2004-09-22 17:55:31
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