Dear Girl 茜の空
あぐり



*ちりちりと揺れてる空の片隅へ 帰るきみは恋も知らない*




イヤフォンをして
黒板に鼓膜の言葉を連ねていた
うっすらと覆い被さる、夕焼けは恋人の色だった
頬杖をついてるきみの髪の
その小さなうねりにあどけなさを見つけて
(わたしたちまだこどもだよね。)

真っ白な文字が染まって
ひとつ ひとつの歌がほどけていく
きみがなにか囁いてもいいように
埋めているのは左耳だけだよ
零したきみの真ん中に広がるみずの成分は
多分、明日になったらほんの少し
薄い苦みが増えるんだと思う
(色は青みを失うのだと思う。)

ささやかな影は伸びてくのに
届かないものが近くに散らばっているのはどうして
ひそやかに鐘が鳴るからもう帰ろうか
わたしは今日もきみに恋の話をするんだろう
きみは今日もわたしに曖昧な沈黙をくれるんだ
空に舞っているひかりの欠片が
この教室に降り注ぐよ
わたしたちはまだちいさな少女で
手を繋いで離さないことも許されるって知ってる
少しずつ暗くなっていく空はまだ広くて
ぜんぶを見たことのないわたしたちはまだなんにも産めない
この歌が終わったら帰ろうか
はやくはやくって
あんなにも空が焦げ付いてる






自由詩 Dear Girl 茜の空 Copyright あぐり 2009-12-27 00:20:36
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