インド旅行記5(ジャイプール→アーグラー)
チカモチ

朝の6:10発のアーグラー行き電車に乗るべく、5:30にホテルを出発しました。
が、インドの電車は定刻どおりに来ないというのが有名で、実際に発車したのは7:00頃でした。中には6時間遅れた、なんて例もあるようなので、これはかなりかわいい方みたいです。

プラットホームではたくさんの乗客が時間をもてあましていましたが、そんな中で面白い場面に遭遇しました。

品の良い西洋人の親子でした。お父さん、お母さん、娘。私のすぐ目の前にいて、いかにも退屈そうにしている姿が目についたのですが、娘の方が近くにいた修行僧らしき老人に声をかけ、一緒に写真を撮ってくれないかと頼みだしたんですね。
どうやら老人は英語をあまり理解できない風だったのですが、身振りなどでなんとなく分かった風で、びっくりするくらい上機嫌になりました。
満面の笑みを浮かべながら西洋人の娘と写真を撮る修行僧。周りにいたインド人も群がり、撮った写真を1枚1枚確認し、ああでもないこうでもないと評価しながら騒いでいます。しまいには女の子は周りの助言に従って、修行僧と肩を組む始末。一体何枚撮ったのかは分かりませんが、けっこうな時間をかけて撮影していました。

少し前まで修行僧はプラットホームに座り込み、妙な火をたいて瞑想していたというのに、この俗っぷりは一体何なのでしょう?そもそも女人に肩を抱かれるのはOKなのでしょうか。こういういい加減ぶりや、面白いものに対するハングリー精神がインドだなぁと思い、肩の力が抜けていくのを感じました。
写真1枚であそこまで盛り上がる彼らを本気でバカだと思いましたが、それはもちろん好意的な感覚でした。西洋人の女の子から、インド人の良さを教えてもらった気がします。

さて、そうこうしているうちに列車が来て、無事に乗り込むことができました。
乗ること6時間弱。ずっと眠っていたので、けっこうあっという間でした。

ホテルへ行き、とりあえず食事。アーグラーの主な見どころはタージマハルなんですが、あいにく金曜日はお休みということなので明日に持ち越しとなり、周辺を散策していました。

夕方、ホテルの屋上で景色を眺めていたら、恰幅のいい男性に声をかけられました。
もうどこかまわったのか?と聞かれ、今日到着したばかりだからまだどこにも行っていない、と答えると、川の向こう岸から見る夕暮れのタージマハルが最高だから、よかったら今から見にいかないかと誘われました。

この国では落ち着いて何もできやしません。公園で本を読んでいたら子どもたちにお金をせびられ、屋上でたたずんでいればこんな風に声をかけられる。そりゃそうだ。大富豪・日本人の女の子が一人でほっつき歩いていたら、放っておかないわけがない。

でも夕暮れのタージマハルは魅力的だったし、ホテルにいる人だから悪い人ではないだろうと思い、乗っかることにしました。オートリクシャーで鉄橋を渡り、向こう岸へ。案内されたビューポイントには先客が何人かいて、次第に薄暗くなっていくタージマハルを静かに見守っていました。

恰幅のいい男性は(たしか)サムという名前で29歳、まだ結婚していないのだと誇らしげに話していました。
「インド人の男性は20代の前半で結婚するのが普通なんだけど、俺はまだ結婚していない。でもいいんだ。自由だ。結婚なんてまだまだ先でいい。自分の金を好きなように使って、大好きな旅行もできる。家庭を作ったらそうもいかなくなる。かみさんの面倒を見て、自分が稼いだ金を養育費にあてなければならないなんて考えただけでもぞっとする」

ううん、同じような考えの人はどこにでもいるんですね。私はサムのことがすっかり好きになり、結局明日の観光も面倒みてやろうという彼の提案に快く承諾しました。提示された金額もまぁ悪くはない価格だったし、実際、彼が案内してくれた夕暮れタージマハルは素晴らしいものでした。

宿泊したホテルは、ジャイプールのそれに比べるといくらかまともな施設でした。
トイレに排泄物はなかったし、シャワーも温かいお湯がでる。
ここではぐっすりと眠りにつくことができました。


散文(批評随筆小説等) インド旅行記5(ジャイプール→アーグラー) Copyright チカモチ 2009-12-23 01:26:08
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