からたちのくに風土記
楽恵

<風の記憶>

真夜中過ぎの嵐 
窓辺で震えながら聞く荒れ狂う風の声 
轟々という叫び
揺れる木々の一本一本に
神様が宿っている
翌朝は無残に散っていた
からたちの花

あめかぜの思い出

<土の記憶>

まだ幼児おさなごだった私に
話しかけてきた幼児おさなごの友が
優しく手渡した泥饅頭をつよく握り締めたあとの
指の隙間に残った
土の温もり

天空より降り注ぐ慈雨が
緑の大地にしみこむ様子を
母のさす赤い傘の下であきもせず見ていた
紫陽花の庭 
雨宿りの枝で身を寄せあう濡れそぼった鳥たち
雲間から差し込む光と地上に落とされた影絵

あめつちの思い出

花ひらかせる蕾の一瞬の香りに似て
Google Earthには決して現せない

私のふるさと
からたちのくに
          
からたちの花
うたかたのいのち

風と土の記


自由詩 からたちのくに風土記 Copyright 楽恵 2009-12-14 21:24:35
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