田舎の小さな駅の
Giton

  .
田舎の小さな駅の前にある
ドイツ人のパン屋さん
木造にペンキ塗りの扉を開けると
懐かしい小麦粉の匂いがした
パン屋のおじさんはいつも
カントリー風の派手なシャツにジーパン
粉で真っ白になった手でコーヒーを入れてくれた
  .
ぼくが毎朝同じ時間に行くと
テーブルにはパン屋さんの
小学生の男の子が腰かけて
ぼくらはミルクコーヒーをすすり
小さなカイザーをひとつずつかじった
「子供と会話できれば一人前」と聞いていたから
ぼくは一所懸命にドイツ語で話しかけたが
その子は聴いているのかいないのか
いつも生返事をするばかり
質問には答えなかった
  .
それからぼくは東京に戻り
10年たってその町を通りかかったとき
パン屋の店の前には青い目の青年がいて
ぼくは彼と合わせた目を離せなくなった
青年は達者な日本語で言った
  .
おかえりなさい!
.


自由詩 田舎の小さな駅の Copyright Giton 2009-12-08 09:00:27
notebook Home 戻る  過去 未来