FROM ME TO HUMAN BEINGS(1-1)
草野春心



  /こほん。こほん。マイクチェック
   マイクチェック。本日は晴天……にあらず、
   本日は晴天にあらず
   音量、問題なし
   内容には問題はありますが
   マイクチェック……。え? クリック?
   いらないよクリックなんて日本語なんだから
   それより水ないかな水
   喉がからからにかわいて仕方ない
   冬だからかな……。だから水をさ
   頼むよボルヴィックのとびきり冷えたやつをさ
   東京の水道水はまずくて飲めたもんじゃないから
   頼むよ、ねぇ。……無いの?
   困ったなぁ……/



  ―〈ON AIR〉―



  こんにちは。
  ……えー、只今2009/ 11/ 30
  時刻は13:45となっております
  そしてRainy Monday……ふふふ、イヤ失礼
  東京は練馬区富士見台三丁目
  私の住む学生アパートの一室から
  世界中に生きておられる不特定多数の
  あるいは未だ生まれてもいない不特定多数の
  日本語をmother tongueとするhuman beingsへ
  十本の指の第一関節たちと一対の頼りない眼球
  それから真っ黒な肺を酷使しながらお送りしています
  今流れているのはkraftwerkの1973年の名作AUTOBAHN
  お聴かせできないのが本当に残念です
  本日もこれといったテーマも無く番組を進めていこうかなと
  思っているんですがいかがですか?
  これといったテーマも無く、そう、まるで生命のようにね。
  ……笑うところ、笑うところ!!
  さて、二本目の煙草に火をつけさせていただくとしまして
  Kraftewerkの話でもしましょうか手始めに
  彼らはドイツで今も活動を続けているグループです
  その音楽を簡単に形容するなら、そうですね
  ベキベキしててピコピコしててファンファンしています
  殺伐としながらもその実メロディアスでもあり
  未来的な感覚のなかにも寂寥を伴う郷愁を漂わせていたりします
  すみません簡単じゃありませんね全然
  彼らは電子音楽の大御所といいますか開祖といいますか
  日本風にいうとテクノポップの神様というところですかね
  テクノってのは実はあの忌まわしい「和製英語」でして
  海外ではtechnoなんていう音楽カテゴリーは存在しないみたいです
  しかしkraftwerkはどうやら親日家のようで
  Techno-popなんて楽曲を発表して我々日本人に
  ちょっとしたファン・サービスをふるまってくれたりしました
  なんとDentakuなんてアルバムもあります
  毎度のことながらお聴かせできないのが残念です
  でもまぁインターネットで検索かければいい話なので
  勝手に聴いて賛否両論してくれればそれでいいです
  ところで「素晴らしい楽曲の定義」について
  少しでも考えたことはあるでしょうか?
  ちょっと皆さん一人ひとりの素晴らしい音楽というものを
  頭の中に思い浮かべてみてください何でもいいので
  KraftwerkでもBob Dylanでも
  美空ひばりでも尾崎豊でも何でも
  どうでしょうか?
  皆さん、素晴らしい楽曲を聴いているときって
  こう思いませんか、
  「音楽という概念はこの楽曲を生み出すために現れた」。
  僕は勿論kraftwerkのAUTOBAHNを聴いているとき
  心からそう感じます
  あとthe rolling stonesのLet it bleedね
  あれ、最近の目覚めの一枚でしてね
  大音量で聴くんですよヘッドフォンでね
  寝煙草なんて吹かしつつね
  You can’t always get what you want
  But if you try sometimes well you might find
  You get what you need
  いいフレーズですねこれね勇気づけられますね
  お聴かせできないのが本当に残念ですがね
  はい、ではここいらで一旦休憩をはさみます
  皆さんもご自由にどうぞ



  ―〈OFF AIR〉―

  ―〈and to be continued...〉


自由詩 FROM ME TO HUMAN BEINGS(1-1) Copyright 草野春心 2009-11-30 15:04:18
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