嵐の後の海岸にて
楽恵

嵐が過ぎ去ったばかりの

夜明けの海岸に

僕は僕の相棒の野良犬と連れ立ってやって来た



激しい台風が

思う存分 遠慮なく吹き荒れてくれたおかげで

夜明けの海の薄い水平線は

すっきりとした顔で微笑み 

黙って太陽を待ちかまえていた



ほの暗く濡れた砂浜には

遠い南の国から運ばれてきた

色とりどりの二枚貝や巻貝が落ちていた

どの貝も

花や蝶や星といった不思議な形をしていた


異国で作られた極彩色の仮面も落ちていた



しばらく歩いていくと

波打ち際に

干乾びた人魚のミイラが

流木と一緒に打ち上げられていた



野良犬がそれは河童かと尋ねたので

僕はそのミイラが人魚だと教えてあげた

海に河童はいない

月夜に吠える狼が街なかにいないように



遠くの海に

鯨の群れが見えた

鯨は潮を吹きながら

朝日の光をあびて金色に輝いていた



僕と僕の相棒の野良犬は

鯨たちが水平線の向こうに見えなくなるまで

いつまでも飽きずにその姿を眺めていた




自由詩 嵐の後の海岸にて Copyright 楽恵 2009-11-30 00:10:26
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