風たちの手紙
かんな

北風が肌をかすめて冷たさを置いていく
そんな季節になりました
お元気ですか

わたしは少し厚手のコートをはおるようになりました
相変わらずのブラウス姿にカーディガンを重ね
冷える手先にはカシミアの手袋があたたかい

季節のたまり場には
北風がよく顔を出すようになりました
秋風が置いていった手紙を嬉しそうに毎日読んでいます


北風さんへ

お元気ですか
昨年は丁寧なお手紙ありがとうございました
今年はわたしもお返事を書いてみようと思い立ちました
拙い手紙になりそうですが手にとって頂けたら嬉しいです

「人々はあなたの到来を楽しみにしているみたいだけれど
わたしのことは何だか嫌がる人が多いみたいです」

少しドキッとしたけれど
次に続くあなたの気持ちはあたたかい

「けれども、季節の中にだってヒールは必要
わたしはその役目を楽しんで果たそうと思っています」

あなたはヒールだなんて言うけれど
ほんとうは人々がこころの中で憧れるヒーローなんです
いつも真っ白な季節を運ぶのはあなただから

「雪が降り始めたその瞬間の人々の笑顔が大すきだから
ぜひあなたにも見せてあげたいです」

ありがとう嬉しいです
いっせいに紅葉が咲き誇る瞬間の人々のしあわせな顔を
わたしもあなたに見せてあげたいです

めぐる季節にはいつもどこかで人々の笑顔が咲いている
そんな風に思っています
わたしたちの役割はそんな季節を運ぶこと
わたしもいつまでもその役目を果たそうと思っています

それではこのへんで
また来年のあなたのお手紙楽しみにしています
冷たい季節を運ぶあなたのこころが
いつまでもあたたかくありますように

秋の風より


何度も読み返す北風は嬉しそうにしていて
また来年に向けての返事を考えているようです
秋風からのお手紙にこころはあたたまるばかりなのです

北風が肌をかすめるけれど
実はあたたかさを置いていっているのかもしれない
お元気ですか

わたしはスニーカーをブーツに履き替えて
冷える耳を覆うためホワイトの帽子をかぶります
首もとにはグレーのマフラーがあたたかい

季節のたまり場に立ち寄って
風たちの声に耳をすましてみています
わたしの首すじを撫でてゆく
なんだかこそばゆい風を感じながら



自由詩 風たちの手紙 Copyright かんな 2009-11-20 21:55:49
notebook Home 戻る  過去 未来