三人の男
カンチェルスキス




三人の男が横に並んで
箱の中の小冊子の数をかぞえてる


いち、に、さん
バイトの女子高生が
早退してお疲れさまでしたと
言ってるのも聞こえなかった


短気な老人が社長で、
じっと見てる、間違えたら
いやでも罵られる


三人の男は誰も
緊張してこどもがいる
結婚して指が震えている、
いちど失業して臆病になった


日の長い夏の
空が真っ暗に
窓に映ってる
三人の男の汗は
炭鉱夫が流すような
黒まじり


地球は狭くなった
だが三人の男の
手作業は終わらない
間違ったやつは
ガラスの死刑台


小冊子の包装が
擦れる音が聞こえる
愛人を失った
社長が
グラスの麦茶を
飲み干して
三人の男に合計の
数を聞いた


186
間違いないなと
聞かれ
三人の男は
間違いありませんと
答えた


三人の中で
いちばん若いやつが
数をひとつ読み違えてたのを
自分で気づきながら
黙っていた


すべては滞りなく
進む、その場から逃げたら
足首つかまれて
叩きのめされる
んだ





自由詩 三人の男 Copyright カンチェルスキス 2009-11-17 16:35:53
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