room
本木はじめ

連れてこられました
真っ青な部屋です
まるで深い青空のなかを
迷う小鳥のような気分にもなれ
濃ゆ過ぎる空を切り取ったような
真っ青な部屋です
君は今ごろどうしているだろう
連れてこられました
真っ赤な部屋です
死人花のような鮮やかな赤ではなくて
濃い黒く変色したような赤
血液の中を流れているよな気分にもなれ
暗く赤い部屋です
あなたは今ごろどうしているでしょう
部屋に窓がないせいか
どうにも息苦しいです
「さみしいなんて思ったりしない」
あの日、そう言ったきみが
今ごろあの河原に座り込んで
僕を待っていたとしたら
ごめん 
僕はもうそこへは行けないや
たぶん このままここで
窓を開けるといつも夜なのです
たぶん夜にしか開かない窓だからなのでしょう
いつも暗い空がどこまでも広がっています
あなたが今ごろあの波止場で
あったかいコーヒーを飲みながら
わたしを待っていたとしても
ごめんなさい 
わたしはそこへは行けません
たぶん このままここで

秋の河原に無言のまま座り込み夕日で溶けてゆく空を見つめているふたり
冬の波止場で青白い雲の合間の遠雷を聞いているふたり

たくさんの置き忘れられた傘のある下駄箱で取り残されたふたり
電車の中で過ぎ去ってゆく菜の花を見ているふたり

たぶんあなたは
もう気づいているでしょう
そこがどこなのか
そして僕がだれなのか
たぶんきみは気づいているだろう
そこがどこなのか
そしてわたしがだれなのか

あなたがそこから抜け出すには
きみがそこから抜け出すには


みちはひとつしかない


だけどきみはやさしいから
だけどあなたはやさしいので
きっとそのまま
そこにいるんでしょうね
きっとこのまま
そこにいるんだろうね


自由詩 room Copyright 本木はじめ 2004-09-18 21:34:37
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