カサゴ
北村 守通

雪が降る
雪が降る
銀色きらきら
雪が降る
真っ黒の天上の彼方から
きらきら
きらきら
雪が降る

降り積もったはずだった
銀色は
消えていく
水の底
大地に触れて
砂に触れて
溶け込んで

降っている
降っている
まぶしく
きらきら降っている
誘われて
岩の陰
まんまる目玉が
まばたきをする

空はにじんでいる
空は濁っている
空はよどんでいる
空が時折銀色に光る

岩の上から
まんまる目玉
まばたき忘れて
見上げている
鰓の動きが大きくなる
踏み出そうとする体が
躊躇する

銀色が降っている
銀色が降っている
銀色が
白い砂地に降っている
大地に触れると
溶け込んで

天上の見えない
その世界では
イワシかキビナゴ達が舞っている
一粒一粒
集まって
雲となって
帯なして
海流に吹かれて
揺らめいて
群がる粒に
食いちぎられて
揺らめいて
はためいている

銀色の一切れを
口にくわえて飲み込んでみる
水にのせて吐き出してみる
銀色が舞い上がる
きらめかず
舞い落ちる

いつしか
銀色は止んでいる
空はにじんでいる
空はよどんでいる
空は濁っている
空は真っ暗である
砂地は真っ白である
銀色のみこんで
真っ白である
砂地は銀色を吐き出さない
砂地は銀色を舞い上げない

一人残るは
恥ずかしく
カサゴ大慌てで
岩穴に戻る

ひれで
砂地が巻き上げられて
今日最後の
銀色が
舞い上がる


自由詩 カサゴ Copyright 北村 守通 2009-11-15 23:17:29
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