マザー
ゆるこ

その両手に零れている
内臓の薫りは
私の生まれた日に死んでしまった
柔らかいこころだった

水滴が肌を湿らせるように
じんわりと温もりが呼吸する
世界になったんだ、私
色彩が視界を埋めていく


マザー

吐いた吐息が芽吹くように
小さいてのひらをやんわりと開く
その未知に
瞬いたのです



マザー

駆け抜けたばかりの風が
誰かの模索した地図だけ抱えて
私へと突き付けるのです


いるかの夢
その手で開いた先に
どんな結末が立ち塞いでいようとも

わたしはただ、

マザー

空想のあなたの名を思うのです


自由詩 マザー Copyright ゆるこ 2009-11-14 20:06:33
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