せまい心
オイタル

せまい心の
それでも空いたわずかのすきまに
時計の音がいらだちを埋めていく
あわないパズルのピースのように
(ときおりあるのだ 幻のように
 水面をすべるはずの風の束が
 少し手前で
 戻りようのない滝壺へと落下した
 予定にない酷いステップのために)
夜の窓ガラスの下に群がり
湿った土の上に次々に積もっていく
ごめんなさいね あなた
ごめんなさい

葡萄の房から
円く光を載せた実の一つをもぎ取って
それから少し考えて
種も一息に飲み込んだ
がぎぐげご
この小さな種の光の粒が
ひしゃげた私の心の
底を割ってくれないかしら
底を割って
地面の層を何層も何層もむやみに割って
一番深い水の溜りに届いたら
そこから誰かに
新しい信号を送ってくれないかしら
(すでに今は
 格子縞に整頓された信号が
 世界を覆う毎日だ)

ここでこうして(もういいから せめて)
せまい心の小さな種を
じゃばらに折りたたまれた
ひだのすきまのすきまに
信号をこうして
ピースのピースを そのピースを
(くそったれ)
うまく埋めていかれないかしら
どうですか あなた?


自由詩 せまい心 Copyright オイタル 2009-11-01 00:33:17
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