忘れられた馬
千月 話子


彼女は まだ眠りを欲しがらなかった
寝室を暗くして 何も無い空ばかり見ていた


私は 彼女の束ねられた黒髪を解き
指で梳かしては 滑らかな別夜に
星を探し 月を探した


私達は それぞれの世界に浸り
眠れない夜を旅するのだ


やがては夜の果てが見えるのだろう
私は そこに白い馬を見つけ
その輝きに はたと目を覚まし
隣でいつの間にか眠ってしまった
彼女の 丸まった背中を恨めしく見つめる


黒い馬を先に見つけた彼女の
髪に纏わり付いた 夢の花
月下美人の白い花の残り香を
嗅ぎながら・・・


少しばかり眠り遅れた夜の草原を
私の黒い馬と共に翔る
夏草の青い香りが消えるまで


調教された夜は未明
私達を受け入れて
濃紺の空を散らす







自由詩 忘れられた馬 Copyright 千月 話子 2009-10-12 16:13:39
notebook Home 戻る