ときどき僕は
石瀬琳々

ときどき僕は
草のなかを歩いてみる
さらさらと風が流れてゆく
草穂が膝頭を撫ぜれば
なつかしい思いに満たされる


ときどき僕は
人に話しかけてみる
ときどき
誰とはなしに笑いかけてみる


ときどき
雲間から陽が射せば
忘れていた淋しさに火がつくだろう
理由もなく花を引きむしり
乱した指さきに血がにじんで


ときどき僕は
歌をくちずさんでみる
ときどき
胸にしまった誰かを思ってみる


そして
陽だまりでまるくなって
閉じたまぶたに光が踊るのを見るだろう
虹がかかるのを見るだろう


ときどき僕は
何も考えられなくなる
夕陽が音のない部屋に忍び込めば
辺りにいつかの海が寄せてくる
鴎の声がして 耳の奥で遠く





自由詩 ときどき僕は Copyright 石瀬琳々 2009-10-07 13:39:13
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