分け隔てる
ブライアン

黒板には白いチョークで円が書かれていた。
その上には12グラムと。
この丸い西瓜を3人で分けるとどうなる?と教師は質問した。
手を上げた女子は、3グラムずつになります、と答える。
小学校6年の冬だった。あまりにも簡単すぎる質問に、
教室は騒ぎ出した。

 窓の向こうに見える国道113号線を指して、
 あの道よりも北に住む子と、南に住む子は、
 一緒に遊べなくなるはずだったんだよ、とかつて、その教師は言った。

3グラム。想像通りの回答に教師は興奮気味だった。
黒板消しを握る。円の上に書かれた12グラムの文字を消す。
西瓜と称された、丸い円だけが残る。

 1878年、イザベラバードはこの土地を訪れた時、東洋のアルカディア、
 と称した。その盆地を横断する北緯38度線は、
 (教師によって≒で称された国道113号線)
 小学校の南にあった。小学校の窓から見える、南に広がる豊かな田
 と江戸時代に繁栄した城下町。
 けれど、北に残されたものは何か。湯治場として栄えた街と、
 山の上に作られた、西瓜畑だけだった。

けれど、と黒板を消し終わった教師は言った。
1個の西瓜を3人で分けるとどうなる?と同じ女子に質問をする。
彼女は3分の1です、とさっきよりも小さな声で答える。追求は続く。
じゃあ、3分の1はどんな数?と。
彼女は、0.33333、と3を5回繰り返して、その意図に気がつく。
彼女は、そのあとに3を続けて言うことも出来ないし、
答えを導くことも出来ずに、立ったままだ。

 国道113号線は大きな川にぶつかるだろう。
 そこにはこの土地唯一の橋が架けられている。
 川の向こう。別の小学校がそこにはある。
 そして、別の教師が白いチョークを握る。
 その小学校の窓もまた、きっと南向きだ。
 窓から見える田の景色に、国道113号線が分け隔てるはずだった、
 未来が写ることはない。


自由詩 分け隔てる Copyright ブライアン 2009-09-18 23:14:23
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