ねぐらへ帰ろう
流木

自暴自棄でつり革を握り
満身創痍に揺れていた

伏せ目がちで他人の
足元ばかりが気になっては
給料明細を無くしてしまってた

ポケットのジャラ銭を鳴らして
街角に立つ托鉢姿の
老人を横切る

風を切る肩はあの頃の面影を
どこかに置き忘れたままで

パソコンが入ったバックをぶら下げて
街角に突っ立って雑誌を売りさばく
老人を横切る

信号待ちはいつも
クラウチングスタートの自分を
想像する
前を歩く
あのはげ頭だけには
負けたくはないから
つい足早になる

暴飲暴食のネオン街を横切り
簡素な
ねぐらへと靴を鳴らす
こんな日は

口笛吹いてさ

ねぐらへと戻ろう

煎餅蒲団に潜り込み
高いびきで
銀河鉄道の夢でも見るのさ

鼻歌交じりで

ねぐらへと戻ろう




自由詩 ねぐらへ帰ろう Copyright 流木 2009-09-16 22:35:42
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