枯葉
本木はじめ

距離を守って下さい

噛み砕くために固い葉を望む
一字違いの日々です

ミルクのような牛乳を
もう一杯ください
欲しいのです牧場のように
強烈に踊りだしたくなるほど
こぼしますから

などと
あなたがおかしなことを言ったから
さっきからずっと
地球は回っています
流れ星なんか忘れましょう
せめて電球を見境なく割るくらいにしましょうよ

遠くから蛾が飛来します
体中にまとった白い花粉まがいの粉を
ばらまきながら


あら、もうみんなおやすみになりましたよ
毎晩毎晩よくおねむりになります

女中の言葉に耳を傾けつつ部屋を開けようとすると
鍵がかかっていて開かない
ふすまなのに

あなたさまだけですよ
お目覚めになられているのは

わたしはそう言われると
なんだか自分が唯一選ばれた者のような気分になり
思わずにっこり笑い返していて
屋上への階段へと
足を運んだのです

「おおきな穴ね」
彼女はそう言うと同時に
ぼくの方を振り向きもせず
その暗い穴へと飛び込んでしまった
どこかで聞いたことのある鳥の鳴き声に振り返ると
肥大化した夜のような影がぼくを見下ろしていた
「同じことか」
ぼくは一言つぶやいたあと
彼女を追って穴のなかへと飛び込んだ


自由詩 枯葉 Copyright 本木はじめ 2004-09-12 00:45:35
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