ひとでしか癒されない
吉岡ペペロ

目には目を、歯には歯を、

このハンムラビ法典の言葉は

復讐法だとか拡大報復の戒めだとか

そんなふうに言われてはいるけれど

この言葉の連なりに

私はひとの悲しみを感じるのだ

なんとなく履修した心理学で

アル中の父親と暮らした娘は、アル中の男と結婚することが多い、

そんなテーマの授業があった

アル中の父親に覚えた欠乏感は、アル中の男に愛されることでしか癒されない、

そんな結論だった

暇つぶしのような営みのなかで

ペットの死は

あたらしいペットを飼うことでしか癒されない

仕事での失意や蹉跌は

仕事で取り戻すことでしか癒されない

だからひとのことは

ひとでしか癒されないのだ

目には目を、歯には歯を、

この言葉の連なりに

私はひとの悲しみを感じるのだ


自由詩 ひとでしか癒されない Copyright 吉岡ペペロ 2009-09-08 21:06:29
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