耳に残る眺望
プテラノドン

それ以後、鉄塔に上ることは不可能
となった。首を吊ったコンビニ店長は、一晩中、
風に揺れていた。その姿を ビニールが
引っかかっているだけと、近所の人はやり過ごした。

壁を塗り直すだけでは事足りず フェンスで囲んだ
太い橋げた。その一本には真っ青なスプレーで
喧嘩で死んだ男の名前が印され、数年経った今でも
手つかずのまま残っている。

橋の上なんかから地面に落っことされたら
誰だって死ぬに決まってる―
枯れた献花は 風に、缶ビールや酒瓶の類は 
乞食の胃の中へと運ばれていく。

土手の下に広がる夜の闇は
その二つの事実を、景色として飲み込んでいた。
街灯の道筋の繋がりは、いくつもの別の存在を
証明するためだけにあった。

土手に面した民家の飼い犬が 未だ見えざる者、
こちらに向かって吠えていた。
匂いを辿ったのか、影を臨んでのことなのか
僕としては、そいつなりの励まし方なんだと
思いたい。



自由詩 耳に残る眺望 Copyright プテラノドン 2009-09-06 16:55:16
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