傀儡使い師たち/走れちゃぶ台
海里

風呂桶が出奔したと聞いて
ちゃぶ台は激怒した
呆れた桶だ
生かしてオケぬ

走り出したちゃぶ台
四つ足だということもあり
その気になれば俊足だ

色々なものが乗せられていたが
何しろうちのちゃぶ台ではない
走り出した瞬間なだれ落ちたことでもあり
ここではその描写はしない

ダリの描く象たちみたいに
地平線を限りなく前倒しになりながら
いつのまにか寄り集い
群れをなすに到ったちゃぶ台たち

残り湯をたたえたまま
滑るように
橇のように
前方を疾駆しているはずの桶を追っている

オルフェ、ちゃぶ台のアルファとオメガよ
私は事情をこう想像する
風呂桶は守るべき金魚と出会ったのだ
無事追いついた暁には
君たちは金魚ごと桶を守ってやってくれ

風呂桶のほうとしても
降りかかるちゃぶ台は払わなければなるまいが
君たちにも
彼らにも
事情と理由があってのことなのだから


自由詩 傀儡使い師たち/走れちゃぶ台 Copyright 海里 2009-09-03 23:30:46
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