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渡邉建志

「それでも、こころの中のたいせつな部分に、美しい、青い麦の生えた
草原があって、その向こうには荒々しい崖と海も見えて、そこではわたしとあな
たは虫捕りあみやかごをもって、いまでもはしっているのでした。きっと、だれ
しもが

こころのなかに美しいゾーンがあって、不可触なのだけれど、あって、それはた
ぶん、親に感謝しなくてはならない一番の事だと思います。<わたしは,そこに
アクセスしたい>(以上傍点)。あなたのそこにアクセスしたい。ただひたすら、
そうおもうのです。中学のころ読んだ本のはなしをしたい。中学生のあなたが、
どのような感性でそれを読み、夏のような目をひらいたか、その世界がどのよう
に、いまのあなたにしずんでいるのでしょう。わたしのなかで、青い麦畑が騒ぐ
のでした。頭の中と、胸のおくと、性器に、鈍痛のようなやりきれない沈んでい
く騒ぎを感じるのです」



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「病気なので、水着がワンピースで、虫取り網が虫取り籠で、笑いながら、空は
青く、それ、走り出す。暑いですか」「いいえ」


「好きなものが早く死ねばいい、きれいな女の子も、可愛い赤ちゃんも、みんな
死ねばいい、早くみんな死んで、悲しむわたしは悲しい、悲しいから意味がある、
そう思いませんか」「いいえ」






遠くから一筋の線遠くから一筋の線遠くから一筋の線遠くから一筋の線遠くから一筋の線遠くから一筋の遠くから一筋の線遠くから一筋の線





「ゆれゆれゆれ、半透明のエンピツで書かれた小さな詩。時間のことを考える。
ライ麦とライムのこと。小麦色と白の肌たちと青い傘のこと。青い傘。海に入
れないんだ、お医者さんから止められて、さ。
君は本を開く。本を開く。本を開く。本と君の間にあおむけに挿入されて吸収
されたいと、いつも思う。
ほんとうの空気。空気に私はなれる。そうだと思いませんか」「いいえ」



「あなたの名は夏だったのですか」「いいえ」




自由詩 ---------------------- Copyright 渡邉建志 2009-09-02 02:47:56
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