蛙の亡骸
服部 剛
夏の夜風にあたろうと
歩いたいつもの道影に
黒い
塊
(
かたまり
)
が、ひとつ。
四つん這いの蛙はぢっと
夜闇を、睨みつけていた
翌朝歩いた
同
(
おんな
)
じ場所に
四つん這いの姿のまんま
蛙は引っくり返っていた
( 脳の一部がこめかみから
蕩
(
とろ
)
けて零れ落ちていた・・・ )
思わずしゃがんで見る僕に
細い瞳は薄ら
哂
(
わら
)
いさえ浮かべ
降り
注
(
そそ
)
ぐ朝の光を
ましろい腹にじりじり浴びていた
ふたたび駅へと歩いていって
遠のいてから、振り返る。
蛙の小さい黒点は
何故だかずっと
空に向かって、万歳をしていた
自由詩
蛙の亡骸
Copyright
服部 剛
2009-08-28 20:18:43
縦