THE THIRD FLOOR
とうどうせいら


ドーナツ屋さんの3Fまで
えっちらおっちらトレイを運んだ
窓から見える銀の雨脚
お客もいなくてガラガラ
チュロをかじって見下ろすと
一面に咲いた傘の花
横断歩道を流れていく色の洪水
赤や白 黒に青
とてもきれいなラベンダーの傘がひとつ紛れて
百貨店の方に流れていった

ひとつずつ 傘の下は
嬉しいヒトも悲しいヒトもいるんだね
みんな一個ずつ
温かな心臓を抱えて

高校時代は
よく学校をサボって
ここに来ていた
誰にも追われてないのに
誰かに追われてるみたいに
チュロをかじりながら参考書を開いた

誰を責めてる訳でもないんだ
何から逃げてる訳でもないんだ
ただ ちょっと 外の空気を吸いたかっただけ

私は女子高生
3Fまで上って下を見下ろせる位置に少しだけ
くつろげる時間があった
セーラー服の内側で
大人なのか子どもなのか分からない
細い身体が呼吸をしていた

秋雨降る昼前
喉に流し込んだレモンティーは

学校で飲むのとは違う
不思議な味がした













自由詩 THE THIRD FLOOR Copyright とうどうせいら 2009-08-14 19:31:53
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