水口
西天 龍

小さな水口から
待ちかねたように水がほとばしり
山吹とコデマリの花びらを散らして
春色に染めていく

かたわらでは
田植えの準備が賑やかで
初めて田に入る子供が
父から苗をもらっている

生きることが少し曖昧になったら
子供でさえ苗を植える
この谷の人々に聞いてみるがいい
暦を待ちかねて、水口を開ける歓びを

あまりむずかしいことは語らないけれど
家族総出で田に入り
苗を植え、汗を拭う
この谷の人々に聞いてみるがいい

生きるとはどういうことであるかを
自然とは、季節とはなんであるかを


自由詩 水口 Copyright 西天 龍 2009-08-14 07:53:07
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