「 右眼の恋人。 」
PULL.







あなたの右眼と左眼がまるで恋人同士みたいだったから、

瞼の裏でお気に入りの想い出かじり過ごす週末はヴァイブ。

噛み締めるほどの想い出もなかったはずなのに瞼はずっと閉じたまま。


ホルマリンの中のあなたの眼球に犯されて今夜もひとり上手。

不器用な左眼はためらいがちに茂みの奥の沼地に這入り。

ルーズリーフのような耳たぶをかんだのは三白眼のつめたい眼。


眼を閉じてかみ切った想い出からあふれ出すのはまるでしょっぱい、

だんだんと波打ち乱れてゆくシーツの上で難破船のように。


「右眼は恋人左眼は愛人。」ふたつの眼で犯して欲しいのに。

切なくて朝焼けみたいな眼をしたオンナが鏡の向こう。












           了。



短歌 「 右眼の恋人。 」 Copyright PULL. 2009-08-12 18:52:33
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