騒々の庭
山中 烏流
首より上を
他人のそれと
挿げ替えたまま
歩いていく
そんな人々を
横目で追いながら
私は
ただ、その姿を
見送っている
*
少女Aは
単色の降る
狭い浴室の中で
風呂桶を
掻き回し続けているから
いつまでも
帰路を辿れずに
途方に暮れている
少年Aは
様々な言葉を並べた
ショーケースに
見とれてしまっているから
いつまでも
「言葉」を知れないままで
そこに
立ちすくんでいる
*
の行く先を
案じた人がいた
けれども
その たちは
私の顔をしていないし
人々に
私の言葉を
届けるような術も
持ってはいないから
私は、いずれ
になってしまう
*
昨日
私と同じ顔をした人が
騒々しさの中で
私と
同じようなことを言っては
楽しそうに
会話を弾ませて
笑い合っていたらしい
もしもそのことに
私以外の誰もが
気付かなかったのならば
きっと
私はもとより
ですら
もう、そこに
存在はしていないのだ
*
私を呼んだ声ですら
既に
形を持たないというのなら、