針金ハンガー
たもつ

 
 
二週間前と同じように
針金ハンガーが
屋上のフェンスにひっかかってる
そこにあってももう誰も気にしない

隣の棟の四階の事務室で
女性が端末を入力しているのが見える
その下の階の窓辺で
あなたはお弁当用の紙箱を
折り続けている
国家試験で手に入れた資格など
まったく必要の無い作業を
黙々とひたすら続ける

些細なことだった
その積み重ねであなたは少しずつ
音もなく壊れていった

針金ハンガーが風に揺れる
もしかしたらこのままフェンスと
区別がつかなくなっていくのかもしれない
あなたが僕と他の訪問者との
区別がつかなくなってしまったように

帰り際、僕は施設の人と口論になった
土足厳禁のところを土足で歩いて
注意されたからだった
ただそれだけだった
ただそれだけのことで
ありったけの悪態をその人についたのだ
今度来たとき
あなたと他の人との区別がつくか
僕には自信がなかった
 
 


自由詩 針金ハンガー Copyright たもつ 2009-08-11 23:08:14
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