月夜甘露
木屋 亞万

日が暮れた
夜は歩かぬほうがよい

木が密になる
木が蜜になる
枝葉根幹にくすぐられ
心は山に押し込められる
たまらず虫を踏みつけた
甘い臭いに蓋をするべき

林は濃厚な闇になる
林は重厚な波になる
音は重なり合う
外には漏れない反響の渦
露が滴る幻痛を見て
皮の色が濃さを増すとき

森の明確な階層構造が露になる
森の厳格な愛情行動が新たになる
月明かりの真心は薪の代わりになりはしない
勇敢な白い警告はすでに路傍に臥している
雨に濡れた青い石ころ力を出せないまま
愛の手触りを確かめるように溝に埋もれる

空がぼんやり白むまで
夢を見ているほうがいい


自由詩 月夜甘露 Copyright 木屋 亞万 2009-08-08 02:03:42
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