梅雨明け前の記憶
照留 セレン

朝からの風の匂いで
前線の真下にいると気付いたところ

一晩じゅう置き去りにした鍋からは
酸っぱい匂い、残る悲しみ

部屋干しの洗濯物に引っかかる
濡れた髪の毛
湿ったタオル

鉛筆で黒板の知識書き写す
濡れたノートを破らぬように

紫陽花はもう色あせた
向日葵はもう項垂れた
梅雨は明けない


短歌 梅雨明け前の記憶 Copyright 照留 セレン 2009-08-04 07:51:14
notebook Home 戻る