無言
木立 悟






傷が降り
窓にとまる
話し声
水の声


青と白
多くを知る不幸
管楽器
追いやられて


父も母も妻も子も
友も自己も他も無機もない
夜のまぶしさ
見えない明るさ


じっとじっと
庭は漲る
欲めるものどうしが
欲めあう


何をくぐってきたのか
皆まだらに日焼けしている
岩もある
塩の曇もある


明日は呪いではなく
明日は繰るものでなく
明日は不確かな
休戦の日


裾に入り込む言葉
音のお手玉
無言のくちびるを
見つめる


剥がれては青を見ない青になり
水に鏡に打ち寄せる
昼の星の軸
無数の腔


雨は雨の
裂けめは裂けめの地図を読む
色に触れ
色を聴く


にじみにじみ にじみきり
青に譲り 青に譲る
ひとりがひとりに響くはざま
替え難い しじま


紙は斜めに斜めに重なり
新たな空と目の痛み
鳥と共に上下する火
浪へ消える階段に立つ


降る傷を 腔を
無言にあふれ出るものを
ひとつひとつ
くちびるでふさぐ


光は少なく
海は虹に満ち
底だけが明け
島を照らす


行き交うものなく
ひとつの舟がすぎては戻る
冬はむらさき
手のひらを発ち 手のひらに着く




















自由詩 無言 Copyright 木立 悟 2009-07-29 10:37:46
notebook Home 戻る