ゆびさきを、したさきを
nm6
ゆびさきを、したさきを。するりと、ふれるかふれないかで、はわせるぼくら。しろいからさ。くろいからさ。いきつもどりつをくりかえして、どこかとおくへいこう。「あとじゅうねんたったら」っていって、そしていってしまった、さかなつりたちになみだをする。みかづきのむこうがわを、ふれずになぞる。ぼくらはなんでも。
あるくことに、びんかんだからさ。
きをつけてぼくらは、おぼえるようになぞる。
ゆびさきを、したさきを。ふわりと、うごくかうごかないかで、めでるぼくら。わかるからさ。わからないからさ。かきかた、かきとり、しょうがくせいのころのやりかただよ。ぼくらはせかいを、このめで、このてで。うわがきされるまいにちに、うしなうなんてない。おれんじのさかいめを、ふれずになぞる。ぼくらはなんにも。
すなのようにおっこちてもうとれない。
ぼくのゆびさきがふれる、しかくいやつのすきまに。
ゆびさきを、したさきを。するり、ふわり、そしてとろりとえきたいになって、にげるぼくら。みえるからさ。みえないからさ。ぎりぎりを、みようとしないからさ。ぼくらはみかづきのむこうがわを、おれんじのさかいめを、そしてきみを、せかいを、おぼえるようになぞる。「あとじゅうねんたったら」っていって、そしていってしまっても。ゆびさきを、したさきを。いま、きもちいいということを。