君なきみと君を好きなわたし
木屋 亞万
きみは君という病気なんだ
きみが死ぬまで君は治らない
でも君のままのきみがわたしは好きだから
きみは何も心配することはないんだ
コーヒーに入れる砂糖の量が変わろうが
日々の態度や言葉遣いが変わろうが
きみはいつまでたっても君だから
君につける薬なんてあってないようなものだね
きみは所詮きみでしかないから
わたしの気持ちはわからないだろうね
みんなそれぞれ自分の内側を探るのが大変で
自分以外の世界はどうがんばっても見れやしない
人間というゲームは同時に二人のセーブデータを保存できないんだ
データを消して新しく始めても、設定をどれだけリセットしても
きみの中にあるデータをきみが見たように見ることはできない
だからそんなに先に進んでしまわないで
一緒に同じステージをクリアしていこうよ
ゲームのように人生を考えることに、反対する人がいる
リセットボタンが自殺を生んだと彼らは本気で信じている
よみがえりの魔法が殺人を生んだと彼らは本気で信じている
人々が考えることをやめたのはゲームのせいだと信じているのだ
そして彼らは人間の行動には筋が通っていて、
日々直面する出来事によって、
人間の行動には変化が現れるものだと信じている
小説の登場人物のようにわたしやきみの性格を抽出して
そのとおり行動しないと一貫性や現実性が無いと苦情を申し立てるのだ
デブは大食い
不良は暴れる
メガネはまじめ
ハゲた親父はエロい
彼らはそんなイメージのなかで生きている
そんな人たちと比べると
きみの君という病気は別に人生に悪影響は与えないし
むしろわたしに何らかの関心を抱かせるくらい魅力的なものだから
何一つ心配する必要は無いよ
今宵は二人で通信対戦をしよう
通信ということばの温もりを確かめながら
互いのデータが育ててきたものをぶつけあおう
どちらかが枕に沈んでしまうまで、愛し合おう