小説『石川少女』
オイタル

東の山でテロルがあった
火のないところに煙がたった
晩秋の寒さの中ですぐに鎮火したが
不審火は続く
人気のないところからも自然発火する

空は雲を重ねて黒く笑った
風は目を光らせて時を伺う
犯人は
東の山の若い杉の木だった
自焼テロ
冬のあまりの寒気と
捨てられてしまった里山に対する絶望から
木々の過激派が自ら発火し
大規模な山火事を計画した
風の助けを借りながら
枝を震わせて意思を伝え合う杉の木テロリストたち
テロリストをかばい
ひそかに計画を助ける
山を追われた狸やカラスたち

山の動きを察知した市役所は
大規模な森林の伐採を計画する
木々のテロルを助け
土地を火の海にしようともくろむ謎のコンビニ店長の蠢動

こぼれた木の小枝を
拾って歩く背の高い村人たちとともに
冬の林の木々を救うため
一人の少女が立ち上がる

「テロリストの悲しき心を知る」少女の
さびしい戦いが始まる


自由詩 小説『石川少女』 Copyright オイタル 2009-07-20 06:20:29
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