今日の治療指針
たもつ



二時間待たされたあげく
僕はタクシーの助手席に通された
運転席の医者がちらりと僕のお腹を見ながら
おめでたですね、と言う
何か心あたりは?
そういえば確かに最近酸っぱいものの数ばかり数えているし
犬にもよく吠えられる
ついでに言うと隣ん家の関さんは関さんなのに関サバが嫌いだし
僕の奥さんは化粧ののりが悪いと一日中文句をたれる
ちょうど三ヶ月くらいですね、このまま空港に行きます
と医者は言う
そうか高飛びしなければいけないのだなあ
流れていく景色を見ながらぼんやり考える
高飛びの資金として医者はいくらか用立ててくれた
ついでに高飛びに美女はつきものだそうで
後部座席から一番豊満な看護婦も選んでくれた
豊満なはずだ、何しろ牛なのだから
牛の手綱を引いてタラップを上がると
牛はご遠慮いただいてます
搭乗員に注意される
そんなこと言われても牛との思い出などまだ全然ないのに
淋しさのあまり尻尾の毛を引っ張ってみる
牛は解れて巻き取ると大きな毛玉になった
それならいいですと搭乗員が言うので
毛玉になった牛を持って飛行機に乗り込む
レバーとかが美味しそうな牛ですね
皆から声をかけられる
これは乳牛ですからと言うと機内に祝福の拍手が起こる
このままどこに飛んでいくのかわからないが
今日の勝負パンツも鮮やかなラメ入りだから大丈夫かもしれない







自由詩 今日の治療指針 Copyright たもつ 2004-09-06 13:04:15
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