爆裂ねずみ花火
木屋 亞万

火が回るひまわりみたいな花火の中で
芽吹いているひとつのちいさな双葉
焼けてはじけて回転している火の中で
佇んでいた名もなき息吹は
戸惑った顔で夜空に助けを求めていた

滑り台を滑り降りるいくつものロケット花火は
シーソーの土台に当たって弾け飛んだ
体内に仕込んだ笛を鳴らす前に
甲高く夜空にSOSを叫ぶ前に
カンという金属音とともに弾けて消えた

花火用のでかい線香を
墓参りに持っていったら怒られたので
砂場に小さな山を作って
砂のウェディングケーキに仕立て上げ
そこにいくつもさしたのだ
暗闇に赤く燃える線香

本当は髪の毛に火をつけて
脳ミソの中のあらゆる火薬を噴出して
体内のあらゆる火種を吹き流して
つまらないギャグを連発して
いやだーって叫びながら夜空で炸裂したかった
でも私は花火ではないから、花火にすべてを託した

夏が始まろうが終わろうが
私の身体があんなにも揺れて
あんなにも転げまわることはない
ねずみ花火みたいに、転がる石みたいに、動くことはもうない
誰にも知られていない真夜中の公園で、私は一人であることを知っている

原チャが何台来ようが、周辺住民が怒鳴ろうが
二人連れの自転車警官が現れようが
私は花火をするのをやめない、公園はここしかない、花火をする人は私しかいない
花火をできる場所は、公園しかない
それとも誰かの頭の中?腹の中?車の中?家の中?道路?マンション?コンビニ?商店街?
どこでやったって誰かが怒る、それならここでするまでだ

偉そうに説教垂れる警官が
双葉を踏んでいることだけが気になって仕方がない

私?
どこへでも連れてゆくがいい、どこにいたって、いないも同じ


自由詩 爆裂ねずみ花火 Copyright 木屋 亞万 2009-07-13 02:15:24
notebook Home 戻る  過去 未来