モーニングアフターピル
佐藤真夏

クモの巣に抱かれた雨粒が
かみさまの吐息に焼かれ
人知れず光を集めては
底なしの池に飛び込むのを見ていた

母さんは居なくなって
波紋すら、
できなくて
何処で見失ったのか
命の終着点を
闇雲に追い掛けた
わたしの漂流は
母の後をついて歩いた
幼少時代をなぞり
なぞり切ったら停止するだけの
心理的他殺

波は穏やかに続き
朝夕のない白夜の数週間で
再構築された
あたまとからだ、
そのあいだから伸びる触手は
ベタついて
欲の欠片を貼り付けたまま

、現在地
おやすみなさいと言っては
手のひらを重ねようとする人の子が
ふたつ
わたしたち
向かい合って
交換するものすべて
互いの薬となるはずの
しあわせ
ではなかったか

七十二時間
肌の水分を奪い続ける
線香の香り


自由詩 モーニングアフターピル Copyright 佐藤真夏 2009-07-06 18:59:58
notebook Home 戻る