あいつは サイダーばっかり飲んで
おれの言うことなど聞いちゃいない
あいつは またスカバンドから分けてもらったっていう
うさんくせー煙草を吸ってハイになってる
へー押入れの中には蛍光灯の光あふれてて
平和が芽を出してるんだって?
薄暗い煙の部屋
大麻はこんな臭いじゃねえよって
言えなかった
今日も二人でレコード屋をうろついた
店長は昔ストーナーロック齧ってたんだってよ
ブラックサバス以外の話はまだ聞いたことはない
つーかおれ あれ嫌いなんだよな
何日も道路で轢き均された猫の
わき腹みたいな日よけのルーフ
隣の自販機でドクターペッパーが買えることが
ただ一つここの良いところ
あいつは店でかかってたレコードの話をしてる
有り難がる様なもんじゃないだろ
ロスクルドスがそんなに珍しいか?
”太陽ギラギラ ビルの谷間”
は、と思って見渡した
誰も皆死にそうな面をしている
ドアの向こう
おれの背中で無音が鳴る そしてモンキーズの
恋の終列車が聞こえた
おれは歩き出したくなった
あいつは サイダーを飲んでいる
泡立つ線が頬で霞んでいった
滅多にないことには違いない
こんな真昼間は滅多にない
おれもやけに喉が渇いていた
ドクターペッパーを買い損ねたのはモンキーズのせいだ
考えがじわり汗になって
おれはおもう ドクターペッパーにふさわしい日じゃない
あいつは サイダーの缶を握りつぶす
ステッピンストーンが遠くで聞こえた気がした
おれはもう ビートルズを聞かないことで何かを得ようとは思えなかった
あいつは あの店長に聞こえるくらいでっかいゲップをしてニヤニヤしていた
おれはもう 出来のいい紛い物のほうが気持ちいいことを知っていた
あいつは 時々何もかもを知っていた
あいつは
おれの肩を叩いて
「かっかすんなよ、そんなことだれもきにしちゃいねえよ」
そういって走り出して消えてしまう
誰かよりおれは
いつでもおれはどこかの誰かより苦しいんだ
でもその誰か以外よりは苦しくはない
人を卑下するのも 羨むのも
頭がごちゃつくばかりで どこにも辿りつけない
わかってるつもりだぜおれはよ
誰も気にしちゃいない わかってるつもりだった
つもりだったよ
あいつは先に部屋に戻っていた
こんなきたねえ部屋でも落ち着く時があるんだな
少しだけ笑ってあいつはサイダーを持って来てくれた
ジンジャーエールで返すよ
おれはアレが好きなんだ
にしても
今日はジンジャーエールにはふさわしくない
ドクターペッパーにしたってだ
サイダーと
あいつのガラムの匂いで
やけにささくれ立っていたおれは
モンキーズをもう一度好きになっていた
ヘイヘイ!俺たちゃモンキーズ!
モンキーズはスウィングするのに大忙し・・・・・・