ほたる追い
あ。

浮いた光は気まぐれに運ばれているのか
それとも決まった順路を漂っているのか
ただ、示されたとおりに視線を動かす

乾きから守ろうとする瞳は水の膜を張り
鮮明だったはずのものがぼんやりにじむ
傍らで同じように追いかけるきみの瞳は
やはりしっとりと潤いをたたえており
小さな光をその中に閉じ込めている

虫かごみたいな瞳だね、なんて言ったら
きっときみは機嫌を損ねてしまうだろう
最高の褒め言葉だと本気で言ったって
ぷいとそっぽを向いてしまうんだろう

だから、何も言わない

きみはぼくの最高の水場なのに
その瞳の中にずっと閉じ込められたいのに
たくさん揺れる小さな光の中から
たったひとつに気付いて欲しいんだ

こっちのみずは、あまいぞ
冗談めかしてきみは言う

それが本当だとは夢にも思わない口調で



自由詩 ほたる追い Copyright あ。 2009-06-19 17:08:02
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