窓辺の少女
服部 剛
白い壁に掛けられた
金の額縁には
名も知らぬ画家の描いた
淡い水彩画の少女
朝の光に透けながら
すきま風に膨らむ
カーテンの窓辺に佇む
黒い瞳の少女
日々多くの人とすれ違いながら
誰一人
この心の内側に置かれた箱に
長い間しまったままの涙の化石に
指をふれる者はいない
あの少女だけは
人知れず涙の溢れた
あの日を
知っているのだろう
額縁の内側に広がる
(もう一つの世界)から
部屋の窓辺に佇む少女は
振り向いて
ふたつの黒い瞳は
いつまでも
こちらをじっと、視ている
自由詩
窓辺の少女
Copyright
服部 剛
2009-06-17 20:04:23
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