yume / type_m
nonya


明け方に夢を見た
ミントゼリーを張ったプールに
頭から突き刺さる夢

飛板から身を投げ出した時
迫る水面は
まだ薄青く揺らいでいた

伸びきった指先が
水面を割る直前に
プールは明るく凝固した

気づいた時には
滑らかな皮膚を突き破る
切れないナイフのように
僕は不様な角度で
プールに突き刺さっていた

間髪を容れずに
爽やかで心地よい弾力が
口と鼻を塞ぐ

もがこうにも手足は
清々しさに圧迫されて
動かない

ゆっくりと塗りつぶされていく
意識の端から見たものは

白い手

たおやかに僕を招いている
君の手にとても良く似た

白い手

右手の人差し指を
すべて意識にして僕は
淡い光の屈折にも似た
白い手に触れようと試みた

もう少し

あと少し

握ったと思ったその瞬間に

僕は朝に転げ落ちていた

苦い汗で接着された
パジャマ
消化されないサボテンが
転げまわる胃袋
悲鳴をあげる前に叩きのめした
目覚し時計

そして
背中を這い上がって来る
悔恨の虫

あのまま手を放さなければ
僕は重力からやすやすと逃れて
ミントゼリーの停止した時間の底で
夢も見ずに横たわる不純物に
成り果てていたのかもしれない


自由詩 yume / type_m Copyright nonya 2009-06-12 18:59:13
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