aidanico

ほんのすこし前まで、私は湯水に浸かるように簡単にばらばらな言葉を組み合わせていって言葉を折って畳みそして広げたそれは呼吸するよりも簡単で、食事するより自然な事であった私は私が発した言葉が輪郭を失い音律に余韻を残しながら風景にゆっくり溶けていくのを見失ってしまうほど、鈍感であった私は私に声があるのを知らなかったそれさえ知っていたのなら言葉を紡ぐと言う行為にどれだけの意味が見出せたろうペンを握り書き殴る事など覚えなかったろうだが私は知らなかった、只の子供であったのだ、何故って笑うことだって、意味づけなんて無意味だった。摂理だと言ってそれが通るものだと思っていた。それらしい言い訳や繕いで、紛らわすだけだった。それは見つけたくなかったのかもしれない。それがあることに気付きたくなかったのかもしれない。いくら耳をふさいでも駄目だ。もう遅い。いくら喋ったところでそれは嘘なんだ。柔らかな陽射しがじりじりと、煮詰める様に責め立ててくる。北風が静かに準備をするのを、黙って聴いているんだ。ただ黙って、過ぎるのを待っている。



自由詩Copyright aidanico 2009-06-11 22:15:09
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