半袖二の腕考
たちばなまこと

こないよ
こないよ
このまま
こないひとになるのかな
って
ぶつぶつ頭蓋骨の中でつぶやきながら
階段を下り
上り電車の風を見送る

制服の女の子が柱によりかかって
携帯を耳にあてるしぐさ
いつ見ても小動物みたい
せのびして ずるくって
かわいい
綿ポリのペラペラの半袖から
のびる少女の二の腕
小枝のようで
男の子は焦がれ
手折りたくなる

おとなの女のTシャツ
深いUネックから鎖骨があらわ
厚地のシルク混の
落ち感のある素材から
濡れた二の腕がぬらめいている
手を引く子供と見合わせた目元の
笑いじわ
色っぽい
肉食獣みたい
食べた後
うんとのけぞって
伸びをするのだろう

って
女観察をしながら
下り電車の風を髪の毛に流し
オレンジ色にちっちゃく飛び乗る
おなかの中の
女よ
おりて
おりて
おいで
二の腕がふるんと揺れる初夏


自由詩 半袖二の腕考 Copyright たちばなまこと 2009-06-02 09:05:39
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