縁結びのおみくじ
瀬田行生
二人で引いたおみくじは
その元旦の初詣の甲斐があったのか
二人とも大吉だった
大吉にも中身が色々あって
満点の大吉もあれば
赤点の大吉もあるということを
同時に開いたおみくじの中身を並べてみて初めて知った
私の中身が八割合格で
あなたの大吉が赤点の内容だった
神社ではおみくじを引いて境内の木にくくりつけたりする
白く染まった木をみて
雪の降ることの少ないこの街で
冬を感じたりする
内容に不満なあなたは何やら意味について
私に話しかけてるみたいに
周りから見えるように
大きめの独り言を言ってる
それを横目に自然なしぐさの一つのように
私は境内の木に括りつけようとする
そこであなたの声で手を止めた
「いいのがでたら括りつけずにみんな持って帰るんだよね」
うん
「じゃあ持って帰る」
えっ
と思わず口にすると
とても不思議な顔をあなたはする
「大吉なんだよ」
って
そうだよね
って慌てて繕いながら少し私は迷う
さっきから思っていたのは
あなたのおみくじがもっと不幸な内容ならば
凶ならば
私といたら大吉になると
大きな嘘で包めたのに
って夢みたいな話
大事そうにしまうその赤点みたいな大吉を
見届けた後
私も独り言みたいに似たような言葉をこぼして
財布の中にそっと忍ばせる
そう
この大吉のおみくじは
あなたとお参りをして
二人で一緒にひいたおみくじ
それをあの雪みたいに真っ白く積もった
たくさんの「ひとかけら」にするなんて
やっぱりできない
いつまで持っていられるか知らないけど
結ぶために縦に折りたたんでいた
八割合格のおみくじを
財布にしまえるように横に折りたたみなおした
参拝客であふれる参道の片隅で
「りんごあめを買おう
ひめりんごのりんごあめなんて初めて見た」