祭りの夜
kauzak

彼女と手をつないで今夜
麓の街で開かれる
夜祭りを見に行く

月明かりが硬く降り注ぐ
蒼ざめた石畳の街の四隅に
かがり火が燃える

やがて大弓を載せた
台車が四隅から繰り出して
街中に百合の花を振りまく

静まり返った街を
ゆっくりと揺り起こすように
優しく撫でる

街灯にもたれて
百合の花を胸に挿して
静かな熱気を感じている僕ら

その前をギシギシと軋みながら台車が行く
大弓はもういつでも発射できるくらい
引き絞られ張りつめている



時計台の鐘が零時を告げる

どこからともなく湧き上がる鬨の声
台車は手綱の外れた馬のように
かがり火を目指して突進する

いつのまにか降り出した霧雨が
石畳を濡らす
かがり火のある泉の広場への道は細く

台車はその入り口で行きつ戻りつ
なかなか辿り着けない
いつしか僕らは夢中で台車を押し汗まみれになる

ようやく台車は細い道を突き抜ける
と同時に
引き絞られた矢がかがり火に向かって放たれる

かがり火が消えた瞬間
歓喜の叫びが広場を埋め尽くす
僕らも叫びながら空へ墜ちて行く



余韻を味わうまもなく潮が引くように
歓喜の渦はためらいもなく去り
僕らはつないでいた手をゆっくりと放す

安らかに眠るために


自由詩 祭りの夜 Copyright kauzak 2009-05-30 22:27:20
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