泣き空
こめ

ハローハロー聞こえますか?

殺伐とした絵画の中で

その少女の顔だけが

まだ手をつけられていなかった
ふるびた懐中時計は

なりやまない秒針の音を

闇夜に響かせる

ふたつに割った板チョコを

片方を僕に

もう片方は僕の陰に捧げた

永遠はいつも終焉の

隣の席に座っていた

くるくる回る地球を軸に

この銀河はやむことのない

複雑にでも単純な数式に

挑んではまた壁にぶちあたっていた

ようするに何かがたりないってことだった

戦場の中でも

そこからは悲しみの音楽が

耐えず響き

頭の芯の脳髄まで揺さぶり

べっとりと両耳にこびりつき

離れることをしなかった

傘を盗まれ

ずぶぬれになる体は

水分を吸い込みしだいに重くなり

そしてとうとう倒れてしまうほどの量になっていた

もう遅いかなとそのまま

仰向けになり最後にみた景色は

どんよりと曇った空の泣き顔だった



自由詩 泣き空 Copyright こめ 2009-05-19 00:37:55
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