sixteen
アオゾラ誤爆

となりの人が一歩踏み出す。


チュッパチャップスを舐めながら自転車並列で猥談するジャージ姿の男子中学生は信号を見ないし当然のように歩道に転がる真っ赤な苺にも気付かない。
明日が月曜日であることを憂えても憂えても飽きない十六歳と二ヶ月の女の子はすっぱくて甘くておいしそうなものが大好きなので買ったばかりのローファーが果汁にまみれることも厭わずに内臓みたいな苺を踏む、つぶす。

昨日観た映画のラストシーンを思い出すことが出来ない私は、今日が終わりになるのをただ感じる。葛藤だけが平等ですと旗をかかげて笑っているのは誰だったか。町が暗転する。電線がいやに目障りで、目を閉じ
一、二、三
と唱えた。


じりじり――かわいた熱が、肌や草木やアスファルトを焦がす。


バイト帰りの青年はカメラのファインダーを覗くと、さっきまで立ち止まっていた少女がしゃがみこみ、指で内臓を弄るのをとらえた。丁度ひざ上で静止している風、制服に映える白いふともも。


信号が赤になった。


母親に手を引かれ、少年は見る。
鳩の群れのように一目散に飛ばされていく人々の波。
私は見る。
じゅくじゅくと熟れた傷口のような、あるいは思春期のような果物の裸体。
少女はそれを、踏む、つぶす。


自由詩 sixteen Copyright アオゾラ誤爆 2009-05-10 20:34:34
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