それを生という
イオ


はるか太古の時を知る粒子たちが
わたしというヒトを構成する
きまぐれな偶然の重なりが
悠久の時の流れの中にわたしが存在することを許した

ほんの100年間だけ


自分で自分を造り出すことが出来ずに
あらゆる種類の地球上の部品を借用しながら
わたしは存在している

そう、
わたしの涙はかつては大海でたゆたう水母であり
わたしの肉はかつては荒れ野を駈ける黒い馬であり
わたしの息はかつては大樹を優しく撫ぜる春風であった


いずれわたしは朽ち落ちて
その構成粒子は
全てが残らず還るだろう

海へ
野へ
空へ


その時に彼らは必要とされる処で
必然的に新しい存在となる



願わくば
彼らがわたしであった頃を
あたたかく思い返すことがありますよう




※わたし=全ての人を指す


自由詩 それを生という Copyright イオ 2009-05-09 23:02:22
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