甘い夢 ☆
atsuchan69

禍々しく106ミリ無反動砲を六門装備した
巨大な蟹のようなM50オントスの装軌式車両が一台、
まったく人気のない夜の街を過ぎて
ビルに潜んだ甘い夢を殺しに、兵士たちは散った

すべての忌わしい幻影が、街のそこかしこに隠れていた
奴らは挙って無政府主義者であり、劣等である
その実体は――リミット・アニメで、全世界の若年者に憑依した
華やかなメンインストリートを外れてすこし裏通りをゆくと、
ちびまるこちゃんや、キューティハニー他の革命歌が
深夜にもかかわらず民衆の平凡化を目的として流されていた

――とつぜん、兵士の一人が倒れた

高層の窓から撃たれたのだ、ゴルゴだ!
兵士たちは口々にその名を呟く・・・・
そうだ奴らを侮ってはいけない、昨日も一師団が消えた
相手はたった一体、眼鏡の少女型ロボットだった
魚を咥えたドラ猫が、戦場の街を奔り去る
耳を掠める轟音とともに頭の上を鉄人が飛んだ )))
否、否、信じてはいけない・・・・
それらは虚偽のイメージであり、けして実在などしないのだ
――にも関わらず、兵士が一人、また一人と倒れてゆく

すでに幾つかの分隊が実在しない敵によって滅ぼされた
殺された兵士たちの遺体は虚無に埋もれ、
箒を持ったレレレのおじさんの立つ危うい背後の
どこだか知らない・・・・夕焼けのような、朝焼けの空の色は赤く
聴こえてくるのはスナフキンがうたう、おさびし山の歌だ

爽やかな風に美少女戦士のスカートの裾が翻る、
すると死んだはずの兵士が一人、また一人と起き上がった
・・・・「エイホ」、「エイホ」、「エイホ」、
なぜかドロンボー一味が三人乗り自転車で通りすぎる
黒焦げのドロンジョ様が叫ぶ、――ドクロベエのスカポンタン!

数知れぬ苦笑いをうかべ
甘い夢を胸に抱き、ふたたび・・・・
残酷な朝の光とともに
辛いこの世界に蘇えってしまった

――今日も甘い夢を殺しに、兵士たちは彼処に散る










自由詩 甘い夢 ☆ Copyright atsuchan69 2009-05-09 14:13:11
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