prius
あすくれかおす




誰とも話さず曇りになって
ざんざんと夕暮れが過ぎる日は
きまってしじまがおとずれて
そういう日に
ステレオは死ぬんだ


くちのわるいひとが 正しいこといってる
やさしいひとは ずるいこといってる
おりこうなひとは
どっちら側を信じようね
ブレーキがいつもかすれてる
母さんのチャリで帰る道
微妙に立ち漕ぎしたくない


タイムテーブルにランチョンマットが敷けて
ひとりでにあたたかいスウプが来たりすればいい
灯りがほしいと思うから
次に目を開けるのは夜でいい
夜になったら
きみと回転寿司に行きたい


350のグリーンラベルを
少しずつ飲んで閉じてゆく
こんなときだから
ならすならいまだから
350がゼロに近づくあいだに
家々でひびくジングルをぬって
ならせ
猫でも熊でもパンダでも
ふりむいてしまう呼び鈴を
鼓膜をふさいだあのひとにも


+++


ところでいったい何皿食べるんだ
どうして玉子系ばかり食べるんだ
それと
回転寿司には惑星の
自転も公転も関係がないんだよ


(えいえんなんて
めぐりめぐって
きみのくちからこぼれる
いくらみたいに)


死んでしまったステレオを
深夜にきみと埋葬しにゆく
無音で走るプリウスに乗せて
あぜ道を照らすハイビーム
銀河はくらくてこわいから
プリウスはちょっと不穏です
古いマニュアルの軽がいい


道中できみは
ふくらんだ白いマタニティに
ぼくの手を触れさせる
きみは半月の両目を揺らして
いま1500グラムよ、もうすぐよ
続けてつぶやく
ぐうぜんを、
うみたいの


お墓についたけど
とうぜん人んちの墓ばっかで
ステレオのやり場に困る
もうすぐよ、
ぐうぜんを、
うみたい、
うみたいの
しじまがくらくて怖くて
灯りがほしいとおもう


もうすぐよ
もうすぐよ
ステレオで
産声が
なる





自由詩 prius Copyright あすくれかおす 2009-05-03 21:07:08
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